お役立ち情報

電子帳簿保存法と請求書の実務要件

請求書の電子化

請求業務は、企業内で複数部門にまたがることが多い業務です。営業や経理など複数部門に業務がまたがるということは、業務処理システムも連携することを意味します。そのため一部でも一連の業務の中に、紙出力や押印手続き等の手作業が入ると、全体の効率化が複数部門で低下することになります。コロナ禍でテレワークが前提になった現在では、請求業務こそ手間やコストを削減すべき筆頭業務の1つだと言えます。では請求書や領収書などの取引証憑を電子化する場合は、どういう観点で進めていけば良いのでしょうか。今回は電子帳簿保存法や実務要件に照らした検討ポイントを記載します。

請求書の送付と保存

請求書や領収書等の電子化においては、請求書のPDFをメールで受領することも多いと思います。この請求書等の電子化を「送付」と「保存」に分けて考えると、「送付」については、紙で郵送することはもちろん、メールで請求書PDFを送付しても問題ありません。請求側と支払側の双方が請求内容を認識した結果として、請求書等がメールサーバやクラウド上に取引の証憑として残されていれば、請求の事実は認められるからです。

納品書や請求書等の電子データ(電磁的記録)を紙に出力することなく「電子保存」する場合は、電子帳簿保存法の電子取引の制度に則って保存することが求められます。具体的には電子帳簿保存法の電子取引関係で規定されている「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件」に沿った保存が求められます。法人の場合は、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間が保存期間となるため、長期間にわたる電子保存の運用に耐えられる社内規程*を整備し、これを備え付ける必要があります。
*国税庁「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」3①三
「電子計算機処理並びに電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類」

紙の請求書等を授受する必要のない電子取引

請求書や領収書を紙に出力することなく、取引証憑を電子保存する方法は、電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】*に、その詳細が記載されています。また一問一答の問3「電子取引とは、どのようなものをいいますか」では、電子取引の利用例が具体的に7つ記載されています。
*電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和2年6月 国税庁

下記(1)~(7)の「電子取引」により、取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)が電子データ(電磁的記録)で保存されていれば、紙に出力した書面等を保存する必要はありません。そのため別途郵送等による紙の納品書や請求書等の授受も必要もありません。

【電子取引の例】

  1. 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
  2. インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
  3. 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
  4. クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
  5. 特定の取引に係るEDIシステムを利用
  6. ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
  7. 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

この(1)~(7)の電子取引は、あくまで例であって、実務上全ての例を1つの企業で利用することは殆ど無い、と思います。確かに(1)~(7)のどの電子取引でも取引情報(請求書や領収書等に通常記載される日付、取引先、金額等の情報)が電子保存されていれば、紙の請求書等の証憑保存は不要になります。

しかし複数の電子取引を採用すれば、それぞれの電子取引に応じた留意事項を社内規程で明確にしなくてはなりません。それではかえって経理や営業部門などの業務効率化が阻害されてしまいます。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】の問3には、(1)~(7)の電子取引の特性に応じて「イ」~「へ」までの留意事項が記載されています。仮に(1)~(7)のどの電子取引でも社内的に認めることにすると、その企業は「イ」~「へ」までの留意事項を反映した極めて複雑な社内規程を作成することになってしまいます。

特に営業部門からバックオフィス部門と連携する請求業務を電子化する場合は、可能な限り電子取引手段も絞ることが実務上の重要なポイントとなります。

なお電子取引の取引データ(請求書、領収書、納品書等)の保存について、電子データをそのまま電子保存する方法と、電子データを出力した書面を保存する方法との混在は、原則、認められていません*。

*保存方法が規則性及び継続性なく混在することは認められていません。例外としては、支店や事業所ごと取引の相手先ごとなど、スキャナ保存の場合の申請可能な単位のように、明確に区分整理が可能となる単位で同一の保存方法を行っている場合(それぞれの方法に区分して保存する場合)は、こうした混在による保存も認められます。

電子取引の保存要件

電子帳簿保存法第10条に規定される電子取引による請求書、領収書等の取引情報が記載された電子データ(電磁的記録)の保存等に当たっては、主に下表「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等を行う場合の要件」に示す真実性と可視性を確保する必要があります。

 電子取引における電子データ(電磁的記録)の保存要件施行規則の該当箇所*
1電子計算機処理システムの事務手続きを明らかにした書類の備付け3①三、
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(法第六条第一項に規定するプログラムをいう。以下この条及び第五条第二項において同じ。)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)の備付けを行うこと。3⑤七、
イ 電子計算機処理システムの概要を記載した書類8①
ロ 当システムの開発に際し作成した書類
ハ 操作説明書
ニ 電子計算機処理並びに電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類
2見読可能装置の備付け等3①四、
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。8①
3検索機能の確保3①五、
当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。3⑤七、
イ 取引年月日、勘定科目、取引金額その他の国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目(以下この号において「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができること。8①
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。
4次のいずれかの措置を行う8①
一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
二 当該取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。

*「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」の該当箇所。
算用数字は「条」、丸付き数字は「項」、漢数字は「号」を示します。 国税庁 関係法令集等

この電子帳簿保存法第10条に規定される電子取引の電子データは、下図*に示すように、「税務署長への事前申請が不要」で電子保存ができます。ただし税務署長への事前申請が不要であるにも関わらず、「電子取引における電子データ(電磁的記録)の保存要件」を遵守することが求められていることに注意が必要です。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】令和2年6月 国税庁 P2帳簿書類等の保存方法より(抜粋)

また電子帳簿保存法は、改正を繰り返すごとに適用要件が緩和されていますが、電子帳簿保存法の骨子である「電子データの保存において如何に改ざんを防ぐか」という主旨は不変です。そのため、例えばタイムスタンプを利用しない運用にする場合は、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を、具体的にどのように定めて、これを維持するのか、という観点を見定めた社内規程が必要になってきます。

実は、そうした社内規程を作成しようとすると、複数の社員が相互に監視する体制が必要になる等、タイムスタンプの費用を削減するよりも社員の対応工数の方が高くなり、かえって業務効率化の妨げになる可能性があります。電子帳簿保存法の規定に即した請求業務を検討する場合、このような観点も実務上の重要なポイントとなります。

また電子帳簿保存法は、改正を繰り返すごとに適用要件が緩和されていますが、電子帳簿保存法の骨子である「電子データの保存において如何に改ざんを防ぐか」という主旨は不変です。そのため、例えばタイムスタンプを利用しない運用にする場合は、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を、具体的にどのように定めて、これを維持するのか、という観点を見定めた社内規程が必要になってきます。

実は、そうした社内規程を作成しようとすると、複数の社員が相互に監視する体制が必要になる等、タイムスタンプの費用を削減するよりも社員の対応工数の方が高くなり、かえって業務効率化の妨げになる可能性があります。電子帳簿保存法の規定に即した請求業務を検討する場合、このような観点も実務上の重要なポイントとなります。

改正電子帳簿保存法を踏まえた電子保存

2020年(令和2年)10月1日「電子帳簿保存法」が改正されています。改正内容は下表の通りです。

改正年主な改正事項等電子帳簿保存法改正の詳細
2020年税制改正による電子帳簿保存法改正財務省:令和2年度税制改正(令和2年3月財務省)
電磁的記録の保存に関し、既存のa.とb.に加えて次のc.とd.の保存方法を認められました。5(1)電子帳簿等保存制度の見直し(*)
(既存の保存方式)
a.データの受領後遅滞なくタイムスタンプを付与
b.改ざん防止等のための事務処理規程を作成し運用
(追加された保存方式)
c.ユーザー(受領者)が自由にデータを改変できないシステム   (サービス)等を利用
d.発行者側でタイムスタンプを付与
→ユーザーが自由にデータを改変できないシステム(クラウド会計・経費精算サービス等)を利用している場合には、タイムスタンプの付与は不要。

*令和2年度 税制改正|財務省

2020年の電子帳簿保存法改正において、c.の保存方式が認められたことで、請求書等の受領者側が自由にデータ(電磁的記録)を改変できないクラウドサービス等を利用すればタイムスタンプを付与する必要がなくなりました

またd.の保存方式が認められたことで、請求書等の発行者側がタイムスタンプを付与した場合受領者側ではタイムスタンプを付与することなく電子保存ができるようになりました。

そのため請求書PDFをメールで送付する場合、送付側が請求書PDFにタイムスタンプを付与すれば、受領側はタイムスタンプを付与することなく、電子データを請求書の原本として保存することが可能となりました。

もっともタイムスタンプ付の請求書PDFをメールで送付する場合でも、受領側の企業に、そうしたタイムスタンプ付の請求書PDFの受け取りメリットがあるかどうかについては、事前に確認しておくことが必要です。

電子帳簿保存法が改正されたからと言って、直ちに改正内容を踏まえた社内規程に変更している企業の方がまれだからです。請求側の企業が、あたかも法令メリットを押し付けるような印象を受け取り側の企業に与えることは避けなければなりません。

電子取引データとスキャナ保存データの一体的な管理

電子帳簿保存法の理解とは別に、実業務では請求書や納品書のPDFを電子メールで受信することや、紙の請求書や領収書等を郵便で受領することも多いと思います。

電子メールによる請求書や領収書のPDFの受領は、電子帳簿保存法の電子取引に該当するので、これを機会に、紙の請求書や領収書等も、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を適用する企業が増えてくるはずです。

スキャナ保存制度は、令和3年度(2021年度)電子帳簿保存法改正(令和4年1月1日施行)*から、税務署(税務署長)への事前承認が不要となり、適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等)も廃止されます。こうした適用要件の緩和が、これからスキャナ保存制度を採用する企業への追い風となるからです。

参考:ファーストアカウンティング 令和3年度(2021年度)税制改正大綱から読み解く「2021年度:電子帳簿保存法改正」

またこうした改正電子帳簿保存法の適用環境を踏まえて、今後は、電子取引とスキャナ保存制度の両方に取り組む企業が多くなると思います。その場合、システム的にはスキャンした画像データと、電子取引により受領したPDFを格納する文書管理システムが必要になってきます。

電子帳簿保存法では、電子取引により授受されたデータの保存に当たって、「訂正削除履歴や検索などの機能要件を満たす」場合は、スキャンした画像データと、電子取引のPDFデータを同じ文書管理システムで保存しても差し支えない、とされています。

つまり真実性や可視性を確保するための要件を満たすスキャナ保存の承認*を受けているソフトであれば、電子取引により授受したデータを、スキャナ保存用の文書管理システムで保存できることになります。

参考:公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA) 電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧

業務効率化を進める観点

電子帳簿保存法第10条に規定されている電子取引による電子データ(納品書、請求書、領収書等)は、電子データを原本として取り扱えるので、現状わざわざ書面に出力して長期間保存している企業は、そうした運用を見直し、バックオフィス業務の手作業業務をはじめとする対応工数の削減に取り掛かれる状況にあると言えます。

その場合、膨大な契約書、領収書の紙データを一気に減らすことを考えるよりも、先ずは請求書業務の重要書類である納品書、請求書など、業務効率化の対象を絞って、最新のITソリューションの適用検討を進めていくことが現実的です。

一般的に、紙データを保管している倉庫費用とITソリューションの適用費用を比較すると、倉庫費用の方が安く見えてしまうことが殆どです。業務の効率化は、スペースのコストよりも社員の手間や管理コストの削減の方が遥かに重要な検討項目となります。

こうした請求書業務をリモートで効率的に実施できたら自社の複数の業務部門がどれくらいコスト削減できそうか、先ずはこうした観点でコストパフォーマンスに優れたITソリューションの適用検討を進めていきましょう。