導入事例

株式会社T K Cは、昭和41年10月の創業依頼、一貫して会計事務所と地方公共団体の二つの分野に専門特化した情報サービスを展開。国内の会計ソフトウェア業界において、独自の地位を築いているベンダーである。T K Cが提供する税務と会計のサービスは、日本の会計事務所の約3分の1が利用しており、その顧客数は1万弱の会計事務所。そして、59万社の企業におよぶ。

昨今、注目を集めているスキャナ保存制度の要件に対応したクラウド型のストレージサービス「TDS」は、ファーストカウンティングが提供する「Robota」を導入した提供を開始。さらに医療費の領収書に特化したサービスも「Robota」の機能を搭載し、2021年1月にリリースした。

自社開発を行っているエンジニアリングに強いT K Cが「Robota」を選定した理由に迫った。

課題

自社サービスの証憑の読み取り精度の向上で試行錯誤

TKCが提供するTKC証憑ストレージサービス「TDS」は、証憑(請求書、領収書、レシート等)をスキャンし、電子化したデータをTKCのデータセンター(TISC)に保存するとともに、会計ソフトにデータ連携できるサービスだ。

以前からTKCでは、スキャナ保存制度の要件への対応と同時に、スキャンした請求書や領収書の内容を文字データとして抽出することに取り組んでいた。スキャンした請求書や領収書の内容を読み取るために、AI-OCRと言われるサービスを中心に比較検討し、自社のサービスに組み込んで読み取り精度などを試していた。

TKC自社サービスTDS

「当初、OCR機能を独自に構築しました。スキャンした請求書や領収書の文字は正確に読めるのですが、発行元や取引金額、税額など項目の振り分けが困難で正確性を欠いていました。フォーマットがある程度は統一されているレシートの読み取りはよいのですが、領収書等の様式は様々で苦労しました。不定型の領収書を読み取るために、外部のA I-OCRサービスを探しており渡りに船でした。」(魚谷氏)

選定のポイント

製品化されているA Iサービスかつ読み取り精度が決め手

「当時、A I-OCRサービスの会社は、”PoC(実証実験)から始めましょう”という流れがほとんどでした。PoCでの個別のカスタマイズは弊社側のコストも時間も膨大にかかりますので、製品化されているA Iサービスを探していました。ファーストアカウンティングのソリューションは、製品化されていてA P Iで呼ぶだけで連携ができました。」(魚谷氏)

TKCのデータセンターで自社開発していたOCR機能をRobotaに置き換えたような形である。既に製品化されていたファーストアカウンティングが提供するA Iサービス「領収書Robota」「請求書Robota」との連携で、開発コストや開発工数をかけずに導入ができた。導入の軽さだけでなく、何よりRobotaの導入の決め手は「読み取り精度の高さだった」と魚谷氏は話す。

さらに代表取締役社長の飯塚真規氏は、選定当時の感想を次のように話す。

「何でも読み取れます。というブラックボックス的な話しではなく、なぜ読み取れるのかを詳細に説明していただけたので安心できました。例えば、証憑を読み取るにも、複数のAIで相互の数値を取得しているという説明を聞いて、これはすごいソリューションだなと思いました。逆に、早くこれをお客さまに提供しないといけないと感じました。」

導入のポイント

自社サービス「T D S」への実装は簡易、ユーザーへのA Iの説明が重要

魚谷氏、吉里氏がプロジェクトをマネジメントし、UI設計担当者は荘子氏(TDS担当)と星野氏(医療費控除担当)の2名。

TDSにRobotaを導入するタイミングは奇しくも消費増税・軽減税率制度が施行されて間もない時期だった。消費税率が軽減税率と標準税率の複数税率となる。レシートにも「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」が記載されるようになった。記帳・集計に関しても、軽減税率が適用される売上(仕入)と標準税率の売上(仕入)を明確に分けなければならない。

そのため、軽減税率制度に対応した機能についても追加で実装する必要があった。「レシートにある複数税率の内訳が税込み金額なのか税抜き金額なのかというのを、後から追加して判別できるようにしていただきました。当社の開発工数としてはほとんどかからず、ファーストアカウンティングさん側で対応いただく形で開発は済みました。」(魚谷氏)

Robotaの機能を搭載したTDSを実際に使った会計事務所さまから「読み取り精度が格段と良くなっていることに感動しました」との声を多数いただいている。

効果

お客さんからの「読み取り精度と速度に感動しました!」との声

既に正式版を提供し、実際にお客様に利用いただいています。レシートや領収書を今までは見ながら、入力していたのが、スキャンで読み取れるので多くのお客様から感動の声が挙がっています。

「まずは読み取り速度が格段に速くなったという声があがっています。TKCの標準搭載のOCRよりRobotaの方が読み取る速度が格段に速いと。体感で10秒から2秒ぐらいに短縮されたという話も聞いています。」(荘子氏)

読み取り速度だけでなく精度に関しても、格段に良くなって感動しているユーザーもいらっしゃるという。

「取引先名を100パーセント近く正確に読み取っていて、読み取り精度の向上が実感でき、未来を感じた、というようなご意見をいただいています。」(荘子氏)

そして、今後幅広く普及するためには、スキャナーなどの周辺機器の整備や利用促進もユーザーに利用いただくに必要なケースもあると話す。A Iの導入にあたって、新しいITデバイスに対応するモチベーションを保てるようにサポートすることが普及の鍵にはなりそうだと見解もいただきました。

今後のビジョン

不透明な時代だからこそ会計業務の早期化が求められる、それをサポートしていきたい

TDSは、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度に対応しているサービス。その電子帳簿保存法は今後改定される可能性がある。

「電子帳簿保存法に対応するために、TDSの利用者層や利用者数が広がっていく中で、いろんなご期待に応えていかなければならないと考えています。」(荘子氏)

より使い勝手の良いサービスを提供することも欠かせない。OCRは100%ではない。しかしながら仕訳は100%正確である必要がある。その橋渡しがUI設計として重要であるとUI設計担当者である荘子氏は考えている。

さらに、医療費控除のための領収書読み取り機能も2021年から展開している。医療費の領収書をAIで読み取り、その読み取り結果をCSVでアウトプットするといったようなシステムだ。

「税理士事務所さまのほうで所得税の申告書を作られているような場合ですと、お客さまから1年分の医療費の領収書の束をお預かりするようなことがあります。かなりのボリュームになります。2月ぐらいから3月の15日ぐらいまで、会計事務所さまでは非常に大量の所得税の申告書の作成が必要になります。その単純な作業レベルのものを削減していただいて、所得税の申告が合っているかなどのチェック業務や付加価値の高い業務のほうに充てていただくことを目的としたサービスです。」(星野氏)

医療費控除のための領収書読み取り機能にもRobotaが搭載されている。確定申告でピークを迎える税理士事務所の定型作業を効率化していくことで、より良いサービスが個人事業主や中小企業が受けられるようになるだろう。

今後、より変化のスピードに対応していくために経営のスピードも速くしていく必要があり、そのためにも中小企業の会計業務の早期化をサポートしたいと飯塚氏は話す。

株式会社 TKC 代表取締役社長 飯塚真規氏

「経営のスピードを速くしてかなければならない状態に今後会社は追い込まれていくと思います。それは特にこのコロナの状況で明らかになりました。速く意思決定ができる、あるいは先を見通せるようになるということには、経理業務、財務業務のスピードアップが必要です。中小企業の場合、例えば3カ月前の数値を知らない、売り上げを把握していないということは普通にあります。今後、それでは会社を切り盛りできなくなってしまいますよね。経理のやりとりを電子データにして業務をデジタル化することで経営のスピードを速くします。そうすることで、間違えてもリカバリーが利きますよね。“挑戦する中小企業が会計業務を早期化し、今後本当に不透明な状況を乗り切る”そのお手伝いができればなと思っています。」(飯塚氏)

株式会社TKC
本社:栃木県宇都宮市鶴田町1758番地
業種:IT・情報サービス
業務概要:会計事務所向け、地方公共団体向け、企業・法人等向けに会計処理の中心にしたシステムの提供、金融機関連携サービスの提供