導入事例 株式会社TBSテレビ

TBS グループでは、約 1500 人の従業員を含め毎日およそ 6000 人の番組スタッフが TBS 放送 センターへ出入りして番組制作を行っており、そこでは多数の番組スタッフが毎日何十枚もの会計伝 票を起こしている。そんな中で、現場では経費精算にかなりの時間がかかることから、本来の中心業 務である番組作りの時間を取られてしまうことがあるのが大きな悩みであった。

さらに現行の会計システムも導入から 20 年を経過し陳腐化したことから、各種保守期限が切れる前 に会計システム全体を刷新することが決まった。そこで 2018 年に RFP(提案依頼書)を発行し、 TBS グループ全体で 2020 年秋から1つのシステムを利用するという、大規模な会計システム刷新 のプロジェクトが動き出した。

この会計システム更新プロジェクトの PM を担当したのは、それまで会計システムや経理業務とはあまり縁がなかった TBS テレビ ICT 局システム開発部の加藤克行氏だ。当初は既存の経費精算システ ムの採用を目指して検討していたが、様々な事情からそれをあきらめ経費精算システムの独自開発を 行うことになった。この時、「調査の過程で知ってしまった最新の AI OCR の良さをどうしても生かした い」と考え、新経費精算システムに A I ソリューション「領収書 Robota」を連携させた活用に至ったと いう。その経緯を伺った。

制作現場のためにも AI を入れて、申請負荷を軽減したい

会計システムの刷新プロジェクトは 2019 年より本格的に動き出した。会計システムを刷新するにあたり、 以下の 3 つを実現する狙いがプロジェクトにはあった。

  1. 働き方改革の実現
  2. コンテンツの収支などを含めた管理会計の改善
  3. 不正会計の防止を含めたグループ全体のガバナンスの強化

一つ目の働き方改革でネックになっていたのが社内のインフラ環境だった。

「これまでは社内のイントラネット上のパソコンでしか経費精算ができなかったので、伝票処理をするために は必ず出社しなければなりませんでした。そこで新システム導入後はそういった無駄を省いて、業務負荷を 軽減できるようにしたいと考えていました。」(加藤氏)

また昨今、放送局ではテレビやラジオの地上波放送だけでなく、BS/CS の衛星放送、インターネット配信 や映画化などを含めコンテンツの活用が多岐に渡るようになり、個々のコンテンツがどれくらい会社に貢献 できているかを測るために、管理会計機能を強化する必要があった。

今回のプロジェクトでは、会計システムおよびベンダーの選定において、カスタマイズを極力抑えることで開 発コストを低減したいという大方針があった。そのため、世の中に存在していた経費精算システムをしらみ つぶしに調べていく必要があり、そんな中で AI-OCR[注1]に出会った。検討の結果、放送局の伝票承認 ワークフローは通常の会社に比べてかなり複雑で既存の経費精算システムでは対応できない事がわかった ため、経費精算システムそのものについては自社の運用に合わせて独自開発することになった。しかし、そ こで加藤氏は「既存の経費精算システムの導入は難しいが、そこに搭載されている AI-OCR の仕組みに ついてはなんとか採用し新システムに導入したい」と考えた。

株式会社 TBS テレビ ICT 局システム開発部 加藤克行氏
導入前の課題
  • 伝票処理のための出社と経費精算にかかる業務負担

    社内のイントラネット上 のパソコンでしか処 理 ができないため、出社する必 要があり、現場の業務負荷になっていた。番組スタッフは経費精算が多 く、領収書の内容を手入力し、経費精算の申請作業をするのに時間 がかかっていた。

[注1] 光学式文字認識(OCR) 技術は、手書きの文字やスキャンした画像データを読み取り、文字 をテキストのデータとして抽出する技術。

幅広く調査した結果選択した AI は「領収書 Robota」

可能な限り制作現場で働くスタッフがコンテンツ制作に集中できるように、AI-OCR を導入したいと考えた 加藤氏は、ありとあらゆる AI-OCR を比較検討した。「あとでこんな良いソリューション知らなかった」と後 悔することがないように調査にはおよそ 1 年をかけて、慎重に実施したという。

「経費精算の展示会や新しいテクノロジーのイベントで AI ソリューションの資料を手に入れた数でいうと、 30〜50 社に上ります。採用の可能性があるものなら手あたり次第、すべて一通り調査しました。」(加 藤氏)

その中でもファーストアカウンティングの AI ソリューションは突出して、精度が高かったと感じたと加藤氏は話 す。

「経費精算システムに関して調査したときに、AI-OCR の良さを知ってしまい、この機能は何とか生かした いと思いました。中でも突出して読み取り精度が高いものがあり、その AI-OCR 部分を採用したいと手を 尽くして調べた結果、ファーストアカウント社の AI 機能だという事がわかり、お声かけしました。」(加藤 氏)

選定理由
  • 読み取り精度の高さ

    読み取り精度の高さから現場ユーザーの経費精算にかかる時間を削減 できると期 待 できた。

現場ユーザー、経理担当者から“便利でいいね”の声

新しいシステムを導入すると、今までと違うと言うだけの理由で批判的な声が上がることが多いが、領収書Robota に関してはそういった声は一切上がっていない。早いタイミングで、否定的な意見よりも、“便利でいいね”といった嬉しい感想が寄せられたと言う。

「スマホで写真を撮るだけで自動的に金額が入力され、お店の名前まで入れてくれるなんてすごいね”な どと肯定的な意見が、通常のシステムに比べて、早いタイミングで聞こえました。」(加藤氏)

これにより、現場のスタッフは伝票処理に使う時間を減らすことができ、これによって生まれた時間を、番組制作のためのクリエイティブな業務に使うことができれば、生産性の向上につながる。

社用のスマホからウェブシステムで領収書を撮影してボタンを一つ押せば、Remota がその画像を読み取 って金額や店名などを自動入力し、さらにタイムスタンプまで押して申請ができる状態になる。スマホや社用 PC でいつでもどこからでも、経費精算できるようになったこともあり、経費申請業務を大幅に効率化できたのは大きい。

領収書 Remota の導入によって、承認者や経理担当者は、AI OCR で読み取った内容を手入力で 修正した箇所があるとアイコンで把握できる。それにより、何らかの修正が生じた箇所に着目して、どうして その修正がされたのかを確認をすることができるようになった。つまり、注意して見るべき伝票の選別ができ るようになったとも言える。そのため、経費精算に関わる現場ユーザーだけでなく、承認者や経理担当者の 負荷軽減にも寄与している。

ISSUES
導入前の課題
  • 伝票処理のための出社と経費精算にかかる業務負担

    社内のイントラネット上 のパソコンでしか処 理 ができないため、出社する必要があり、現場の業務負荷になっていた。番組スタッフは経費精算が多 く、領収書の内容を手入力し、経費精算の申請作業をするのに時間 がかかっていた。
RESULTS
導入効果
  • 経費精算の申請作業の大幅軽減

    現場ユーザーはいつでも、どこからでも社用のスマホから撮 影 して、領収書Robota が読み取った情 報をボタン一 つで申請できるようなった。
  • 照査の負担の軽減

    承認者や経理担当者は、申請内容で確認すべき箇所をすぐに把握で きる。

最後に今後のビジョンについて加藤氏は、経費精算だけでなく支払業務にも AI の活用を広げていきたい と意欲を語った。 「今回のプロジェクトでは、実現したかったことの一丁目一番地として、まずは領収書の読み取りに AI を 導入しました。評判もいいですし、さらに便利にしていくためにも、請求書の読み取りにも範囲を拡大する ことを検討したいと思っています。」(加藤氏)

記事の内容は、2021年5月20日時点での情報です。