請求書受領サービスの失敗しない選び方!5つの重要ポイントと注意点
はじめに
請求書受領サービスは、経理業務の効率化、コスト削減、ペーパーレス化、そして法制度への対応といった多くのメリットをもたらす強力なツールです。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、自社に最適なサービスを慎重に選定することが不可欠です。市場には多種多様なサービスが溢れており、それぞれの機能や特徴、料金体系も異なります。「どれを選べば良いのか分からない」「導入したものの期待した効果が得られなかった」といった失敗を避けるためには、選定段階で押さえておくべき重要なポイントと、見落としがちな注意点を理解しておく必要があります。
本記事では、請求書受領サービスの選定で後悔しないために、特に重要となる5つのポイントを深掘りして解説します。さらに、選定プロセスで陥りがちな罠や、事前に確認しておくべき注意点についても具体的に触れていきます。これらの情報を参考に、読者の皆様が自社のニーズに合致した最適な請求書受領サービスを選び出し、導入を成功させるための一助となれば幸いです。FastAccountingの視点も交えながら、実践的な選び方のノウハウを提供してまいります。

第1章:なぜ請求書受領サービスの選定は難しいのか?よくある失敗例
請求書受領サービスの選定が難しいと感じる企業は少なくありません。その背景には、いくつかの要因と、それに伴う典型的な失敗例が存在します。まずは、これらの失敗パターンを理解することで、同じ轍を踏まないための準備をしましょう。
よくある失敗例1:機能の多さだけで選んでしまう
多機能なサービスは一見魅力的に見えますが、自社にとって本当に必要な機能が備わっているかどうかが重要です。使わない機能が多いと、操作が複雑になったり、無駄なコストが発生したりする可能性があります。
- 具体例: 「将来的に使うかもしれない」と多機能な高額プランを契約したが、結局基本的な機能しか使わず、コストだけがかさんでしまった。操作画面が複雑で、かえって担当者の負担が増えた。
- 回避策: まず自社の必須要件を明確にし、それを満たすサービスを優先的に検討する。多機能性よりも、自社の課題解決に直結する機能があるかを見極める。
よくある失敗例2:料金の安さだけで選んでしまう
初期費用や月額料金の安さだけでサービスを選んでしまうと、後から追加費用が発生したり、必要な機能が不足していたり、サポート体制が不十分だったりする場合があります。
- 具体例: 格安のサービスを導入したが、AI-OCRの読み取り精度が低く、結局手作業での修正が多く発生。サポートに問い合わせても対応が遅く、業務が滞ってしまった。オプション機能を追加したら、結果的に高額になった。
- 回避策: 料金だけでなく、機能、サポート、セキュリティ、拡張性などを総合的に比較検討する。隠れたコストがないか、料金体系の詳細をしっかり確認する。
よくある失敗例3:AI-OCRの精度を過信してしまう
AI-OCRは非常に進化していますが、100%の読み取り精度を保証するものではありません。特に、手書き文字や特殊なフォーマットの請求書が多い場合、期待したほどの精度が出ないこともあります。
- 具体例: 「AIが全て自動でやってくれる」と期待して導入したが、特定の取引先の請求書がうまく読み取れず、手入力と変わらない手間がかかってしまった。
- 回避策: 無料トライアルなどを活用し、実際に自社で受け取っている請求書(特に読み取りが難しそうなもの)で精度を検証する。オペレーターによる補正サービスの有無や、AIの学習機能についても確認する。
よくある失敗例4:既存システムとの連携を軽視してしまう
請求書受領サービスは、会計システムやERPシステムと連携してこそ、その真価を発揮します。連携がスムーズにいかないと、データの二重入力が発生するなど、かえって非効率になる可能性があります。
- 具体例: 導入したサービスが自社の会計システムと直接連携できず、CSVでの手動アップロードが必要になり、手間が増えた。API連携が可能と聞いていたが、実際には追加開発が必要で高額な費用がかかった。
- 回避策: 利用中の会計システムやERPとの連携実績が豊富か、API連携やCSV連携などどのような連携方法に対応しているか、連携設定の容易さなどを事前に詳しく確認する。
よくある失敗例5:導入後の運用体制や社内教育を怠ってしまう
どんなに優れたサービスでも、導入後の運用体制が整っていなかったり、従業員への周知や教育が不十分だったりすると、十分に活用されません。
- 具体例: サービス導入後、担当者任せにしてしまい、社内での利用がなかなか進まなかった。操作方法が分からないという声が多く上がり、問い合わせが殺到してしまった。
- 回避策: 導入プロジェクトチームを立ち上げ、運用ルールを策定し、マニュアルを作成する。従業員向けの説明会やトレーニングを丁寧に実施し、導入後のフォローアップ体制も整える。
これらの失敗例を教訓とし、次章以降で解説する「失敗しないための5つの重要ポイント」を押さえて、賢明なサービス選定を行いましょう。
第2章:失敗しないための重要ポイント1:自社の課題と目的の徹底的な明確化
請求書受領サービス選定の最初のステップであり、最も重要なのが「自社の課題と目的を徹底的に明確化する」ことです。これが曖昧なままでは、どんなサービスを選んでも期待した効果は得られません。
なぜ課題と目的の明確化が最重要なのか?
- 選定の軸となる: 明確な課題と目的がなければ、数あるサービスの中からどれを選ぶべきか、何を基準に比較すべきかの判断軸が定まりません。
- 導入効果の測定基準となる: 導入後に「本当に効果があったのか」を検証するためには、導入前に具体的な目標値を設定しておく必要があります。
- 社内合意形成の土台となる: サービス導入にはコストと労力がかかります。なぜ導入するのか、導入によって何がどう変わるのかを社内で共有し、関係者の理解と協力を得るためには、明確な目的意識が不可欠です。
課題を洗い出す具体的なステップ
- 現状の業務フローの可視化:
- 請求書の受領(紙、PDF、FAXなど)から始まり、開封、仕分け、内容確認、システム入力、承認依頼、支払処理、ファイリングに至るまでの一連の業務プロセスを詳細に書き出します。
- 各プロセスで「誰が」「何を」「どのくらいの時間をかけて」「どのようなツールを使って」行っているかを明確にします。
- 可能であれば、各プロセスの処理件数や平均処理時間、コストなどを記録します。
- 課題の特定と深掘り:
- 可視化した業務フローの中で、ボトルネックとなっている箇所、非効率な箇所、ミスの発生しやすい箇所、担当者の負担が大きい箇所などを特定します。
- 「なぜその課題が発生しているのか?」を深掘りし、根本的な原因を探ります。
- 例:「データ入力に時間がかかる」→「手入力だから」「フォーマットがバラバラだから」「目視確認に時間がかかるから」
- 例:「承認が遅れる」→「担当者が出張で不在がちだから」「紙の回覧に時間がかかるから」「差戻しが多いから」
- 課題の定量化と定性化:
- 特定した課題を、可能な限り数値で表現します(定量化)。
- 例:月間の請求書処理枚数〇〇枚、1枚あたりの平均処理時間〇〇分、月間残業時間〇〇時間、データ入力ミス月〇件、保管スペース〇〇㎡、印刷コスト月〇〇円など。
- 数値化しにくい課題については、具体的な状況や影響を記述します(定性化)。
- 例:担当者のストレスが大きい、テレワークが実施できない、月次決算が遅れがち、監査対応に時間がかかるなど。
- 特定した課題を、可能な限り数値で表現します(定量化)。
導入目的を具体的に設定する
洗い出した課題を踏まえ、請求書受領サービスを導入することで「何を達成したいのか」という具体的な目的を設定します。目的は、SMARTの原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性がある、Time-bound:期限がある)を意識して設定すると良いでしょう。
- 目的設定の例:
- 「請求書処理にかかる時間を、導入後6ヶ月以内に現状の50%まで削減する」
- 「データ入力ミスを、導入後3ヶ月以内にゼロにする」
- 「ペーパーレス化率を、導入後1年以内に80%達成する」
- 「月次決算を、導入後6ヶ月以内に3営業日早期化する」
- 「202X年X月までに、電子帳簿保存法およびインボイス制度に完全対応する」
この段階で時間をかけて自社の状況を深く分析し、明確な課題認識と具体的な導入目的を持つことが、その後のサービス選定を成功に導くための最も重要な鍵となります。
第3章:失敗しないための重要ポイント2:AI-OCRの「真の」精度と対応範囲の見極め
請求書受領サービスの中核技術であるAI-OCR。その「読み取り精度」はサービス選定における極めて重要な要素ですが、カタログスペックだけでは分からない「真の」精度と、自社の請求書への対応範囲を見極める必要があります。
「精度99%」の謳い文句に潜む罠
多くのサービスが「AI-OCR精度99%以上」といった高い数値を掲げていますが、この数値がどのような条件下で測定されたものなのかを理解することが重要です。
- 測定条件の確認: 特定の綺麗なフォーマットの請求書のみを対象とした場合と、多様なレイアウトや手書き文字を含む請求書を対象とした場合では、当然精度は異なります。自社が実際に受け取る請求書に近い条件での精度データを確認しましょう。
- 「項目単位」か「文字単位」か: 精度が「項目単位(例:請求書番号全体が正しく読み取れたか)」で評価されているのか、「文字単位(例:個々の文字が正しく認識されたか)」で評価されているのかによっても、実用上の意味合いが変わってきます。
- オペレーター補正込みの精度か: AI-OCR単独の精度なのか、それともAI-OCRの読み取り結果を人間(オペレーター)が確認・修正した後の最終的なデータ化精度なのかを確認する必要があります。オペレーター補正込みであれば高精度なのは当然ですが、その分コストや時間に影響する可能性があります。
自社の請求書で「実地検証」が不可欠
最も確実な精度確認方法は、無料トライアルやデモンストレーションを利用して、実際に自社で受け取っている請求書(特に以下の様な読み取り難易度が高いもの)をAI-OCRで処理させてみることです。
- 多様なフォーマット: 取引先ごとに異なるレイアウトの請求書。
- 手書き文字: 特に金額や日付、摘要欄などの手書き部分。
- 印影やロゴとの重なり: 文字の上に会社の角印やロゴが重なっているケース。
- 低解像度・不鮮明なスキャン: FAXで受信したものや、コピーを繰り返したもの。
- 複雑な表形式の明細: 複数ページにわたる明細や、項目が入り組んだ表。
- 外国語の請求書: 英語以外の言語で記載された請求書(対応している場合)。
これらの請求書を複数パターン試してみて、どの程度の精度でデータ化されるのか、どの項目が読み取れてどの項目が読み取れないのか、修正にどれくらいの手間がかかりそうかなどを具体的に評価します。
AI-OCRの「学習機能」と「帳票定義」の理解
AI-OCRの精度を長期的に維持・向上させるためには、以下の機能についても理解しておく必要があります。
- 学習機能: AIが、読み取り結果の修正履歴を学習し、使えば使うほど特定のフォーマットや文字パターンに対する認識精度が向上する機能です。この機能の有無と、どの程度の期間で効果が現れるのかを確認しましょう。
- 帳票定義(テンプレート設定): 特定の取引先の請求書フォーマットを事前に登録(帳票定義)することで、そのフォーマットに対する読み取り精度を大幅に向上させることができるサービスもあります。定義作業の手間や、定義可能なフォーマット数に制限があるかなどを確認します。
- FastAccountingのAI-OCR「Remota」 は、事前の帳票定義なしでも多様なフォーマットを高精度に読み取ることを得意としていますが、必要に応じて特定のフォーマットへの最適化も可能です。
データ化される「範囲」と「粒度」の確認
単に精度が高いだけでなく、自社の業務に必要な情報が、必要な粒度でデータ化されるかも重要です。
- 基本項目: 請求書番号、発行日、支払期日、取引先名、合計金額、税額など。
- 明細項目: 品名、数量、単価、金額といった明細行ごとのデータ化に対応しているか。明細の行数が多い場合や、複雑な内訳がある場合に重要です。
- 摘要欄: 摘要欄のテキスト情報をデータ化できるか。仕訳や分析に活用したい場合に必要です。
- 振込先口座情報: 支払処理の自動化を考える上で、振込先の銀行名、支店名、口座種別、口座番号などを正確に読み取れるかは非常に重要です。
AI-OCRの性能は日進月歩で向上していますが、過信は禁物です。自社の実データで徹底的に検証し、その「真の実力」を見極めることが、導入後の「こんなはずではなかった」を防ぐための鍵となります。
第4章:失敗しないための重要ポイント3:会計システム等との「シームレスな連携」の確認
請求書受領サービスを導入する大きな目的の一つは、会計システムやERPシステムとの連携による業務全体の効率化です。この連携がスムーズに行えるかどうかは、サービスの価値を大きく左右します。
なぜ「シームレスな連携」が重要なのか?
- データの一元管理: 請求書データが会計システムに自動で取り込まれることで、データの一元管理が可能になり、情報の整合性が保たれます。
- 二重入力の排除: 請求書受領サービスでデータ化された情報を、再度会計システムに手入力する手間がなくなります。これにより、作業時間の大幅な削減と入力ミスの防止に繋がります。
- 仕訳作業の自動化・効率化: 請求書データに基づいて仕訳候補が自動で作成されたり、勘定科目が自動で提案されたりすることで、仕訳作業の負担が大幅に軽減されます。
- 月次決算の早期化: 請求処理から会計処理までのリードタイムが短縮されることで、月次決算を早期化し、経営判断に必要な情報を迅速に提供できるようになります。
確認すべき連携のポイント
- 対応している会計システム・ERP:
- 自社で利用している会計システムやERPシステムとの連携実績が豊富か、標準で対応しているかを確認します。主要な国産会計ソフト(弥生会計、勘定奉行、freee会計、マネーフォワード クラウド会計など)や、グローバルERP(SAP、Oracle NetSuiteなど)への対応状況は必ずチェックしましょう。
- FastAccounting は、様々な会計システム・ERPとの連携実績が豊富で、お客様の既存システム環境に合わせた柔軟な連携ソリューションを提供しています。
- 連携方法の種類と特徴:
- API連携: システム間で直接データをやり取りする方法。リアルタイム性や自動連携に優れていますが、提供されているAPIの機能範囲や、設定の複雑さを確認する必要があります。
- CSVファイル連携: 請求書受領サービスから出力したCSVファイルを、会計システムにインポートする方法。多くのシステムで対応していますが、手動でのファイル操作が必要になる場合があります。CSVのフォーマットが会計システムの要件に合っているか、カスタマイズ可能かを確認します。
- RPA連携: RPA(Robotic Process Automation)ツールを利用して、システム間のデータ連携を自動化する方法。API連携が提供されていないシステム間でも連携を実現できる可能性がありますが、RPAの構築・運用コストも考慮に入れる必要があります。
- 連携の深さと自動化レベル:
- 単に請求書データを渡すだけでなく、どの程度まで会計処理を自動化できるかを確認します。
- 仕訳データの自動生成: 請求書情報から仕訳データを自動で作成できるか。勘定科目、補助科目、部門、税区分などをどのように判定・設定するのか。
- マスタデータ連携: 会計システムの取引先マスタや勘定科目マスタなどを参照・同期できるか。これにより、仕訳の精度が向上します。
- 支払データの連携: 請求書データに基づいて支払データ(FBデータなど)を自動生成し、インターネットバンキングと連携できるか。
- 単に請求書データを渡すだけでなく、どの程度まで会計処理を自動化できるかを確認します。
- 連携設定の容易さとサポート体制:
- システム連携の設定が、専門知識のない経理担当者でも容易に行えるか。設定マニュアルやサポート体制が充実しているかを確認します。
- 導入時に連携設定のサポートを受けられるか、有償か無償かも確認しておきましょう。
- セキュリティ:
- システム間でデータをやり取りする際のセキュリティ対策(データの暗号化、アクセス制御など)が十分に講じられているかを確認します。
会計システム等との連携は、請求書受領サービスの導入効果を最大化するための要です。デモンストレーションやヒアリングを通じて、自社のシステム環境や業務フローに最適な連携が実現できるかを徹底的に確認しましょう。
第5章:失敗しないための重要ポイント4:料金体系の透明性とトータルコストの把握
請求書受領サービスの料金体系は、提供会社やプランによって大きく異なります。初期費用や月額料金だけでなく、将来的に発生しうる追加費用も含めた「トータルコスト」を正確に把握し、自社の予算や利用規模に見合っているかを慎重に評価する必要があります。
料金体系の主な構成要素
多くの請求書受領サービスでは、以下のような料金項目が組み合わさって総費用が決まります。
- 初期費用(イニシャルコスト):
- システム導入時のアカウント発行手数料、初期設定費用、導入コンサルティング費用など。無料の場合もあれば、数十万円かかる場合もあります。
- 月額基本料金(ランニングコスト):
- サービスを利用するための固定費用。通常、利用できる機能、処理可能な請求書枚数の上限、利用ユーザー数の上限などがプランごとに設定されています。
- 従量課金:
- 月額基本料金に含まれる上限を超過した場合に発生する追加料金。
- 請求書処理枚数に応じた課金: 1枚あたり〇〇円といった形で課金されます。AI-OCRの利用料、オペレーターによるデータ化作業料などが含まれる場合があります。
- ユーザー数に応じた課金: 利用ユーザー数が増えるごとに追加料金が発生します。
- データ保管容量に応じた課金: 一定のデータ保管容量を超えると追加料金が発生する場合があります。
- 月額基本料金に含まれる上限を超過した場合に発生する追加料金。
- オプション料金:
- 特定の機能(例:高度なワークフロー設定、特定の会計システムとのAPI連携モジュール、複数部門管理機能など)を利用する場合に別途発生する料金。
- サポート料金:
- 基本的なサポートは月額料金に含まれることが多いですが、専任担当者による手厚いサポートや、オンサイトサポートなどは別途有償となる場合があります。
料金比較時の注意点
- 「見た目の安さ」に惑わされない: 月額基本料金が安くても、処理枚数あたりの従量課金が高かったり、必要な機能がオプションで高額だったりする場合があります。自社の平均的な請求書処理枚数や必要な機能を考慮して、総費用をシミュレーションすることが重要です。
- 料金体系の透明性: 各料金項目が明確に提示されているか、隠れたコストがないかを確認します。見積もりを依頼する際には、詳細な内訳を求めるようにしましょう。
- プラン変更の柔軟性: 事業規模の拡大や縮小に合わせて、プランを柔軟に変更できるか、変更時の手数料や条件などを確認します。
- 最低利用期間と解約条件: 多くのクラウドサービスには最低利用期間が設定されており、期間内に解約すると違約金が発生する場合があります。契約前に必ず確認しましょう。
- 無料トライアルの範囲: 無料トライアルで利用できる機能や期間、処理枚数に制限があるかを確認します。トライアル期間終了後に自動的に有料プランに移行するのか、別途手続きが必要なのかも把握しておきましょう。
トータルコストを把握するためのステップ
- 自社の利用状況の把握:
- 月間の平均請求書受領枚数(紙、PDFなど形式別も把握できると良い)
- サービスを利用する予定のユーザー数
- 必要なデータ保管期間と予想されるデータ量
- 必須機能とオプション機能の整理:
- 自社にとって必須の機能と、あれば便利なオプション機能を明確にします。
- 複数社から見積もりを取得:
- 候補となる複数のサービス提供会社に対し、上記の利用状況と必要な機能を伝えた上で、詳細な見積もりを依頼します。
- 見積もり内容の精査と比較:
- 各社の見積もりを比較し、初期費用、月額基本料金、従量課金、オプション料金などを項目ごとに整理します。
- 不明な点や曖昧な点があれば、必ず提供会社に確認します。
- 将来的なコスト変動の予測:
- 将来的に請求書枚数やユーザー数が増加した場合のコスト変動も考慮に入れておくと良いでしょう。
料金はサービス選定における重要な要素ですが、安さだけを追求するのではなく、提供される価値(機能、サポート、セキュリティなど)とのバランスを総合的に評価し、長期的な視点でコストパフォーマンスの高いサービスを選ぶことが肝要です。
第6章:失敗しないための重要ポイント5:サポート体制とセキュリティ対策の徹底確認
請求書受領サービスは、企業の重要な取引情報を扱うシステムであり、日々の業務に深く関わるため、導入時および運用開始後のサポート体制と、堅牢なセキュリティ対策が不可欠です。これらが不十分な場合、業務の停滞や情報漏洩といった深刻な問題を引き起こしかねません。
サポート体制で確認すべきこと
- 導入支援の充実度:
- 初期設定サポート: アカウント設定、システム連携設定、ワークフロー設定など、導入初期の煩雑な設定作業をサポートしてくれるか。専任の導入コンサルタントがつくか。
- データ移行サポート: 既存の紙の請求書や電子データを新しいシステムに移行する際のサポートがあるか。
- 操作トレーニング: 実際にシステムを利用する従業員向けの操作説明会やトレーニング、マニュアル提供などが充実しているか。
- 運用開始後のサポート:
- 問い合わせ窓口: 電話、メール、チャットなど、どのような問い合わせ方法があるか。対応時間は平日日中のみか、24時間365日対応か。
- レスポンスの速さと質: 問い合わせに対する返答の速さや、問題解決能力の高さ。実際にトライアル期間中に何度か問い合わせてみて、対応品質を確認するのも有効です。
- FAQやヘルプドキュメント: よくある質問とその回答、詳細な操作マニュアルなどがオンラインで整備されているか。
- 障害発生時の対応: システム障害や不具合が発生した場合の連絡体制、復旧までの目標時間、代替手段の提供などが明確になっているか。
- 法改正への対応サポート:
- 電子帳簿保存法やインボイス制度など、関連法規が改正された場合に、システムが迅速に対応されるか。法改正に関する情報提供や、対応方法に関するサポートがあるか。
セキュリティ対策で確認すべきこと
請求書には、取引先の情報や取引内容、金額といった機密情報が含まれています。これらの情報が漏洩したり、改ざんされたりすることがないよう、万全なセキュリティ対策が施されているかを確認する必要があります。
- データの暗号化:
- 通信経路上(SSL/TLSなど)および保管時(AES256など)にデータが暗号化されているか。
- アクセス制御と権限管理:
- ユーザーIDとパスワードによる認証はもちろん、二要素認証(2FA)やIPアドレス制限などのセキュリティ機能があるか。
- ユーザーごとに操作権限(閲覧、編集、承認など)を細かく設定できるか。
- 操作ログ(誰がいつ何をしたか)が記録され、追跡可能か。
- データセンターの安全性:
- データが保管されるデータセンターの物理的なセキュリティ対策(入退室管理、監視カメラなど)や、耐災害性(耐震構造、自家発電設備など)が確保されているか。
- 国内法に準拠したデータセンターを利用しているか(特に海外サービスの場合)。
- バックアップと冗長化:
- データの定期的なバックアップが行われているか。バックアップからの復旧手順や目標復旧時間が明確か。
- システムが冗長化されており、一部に障害が発生してもサービスが継続できる体制になっているか。
- 第三者認証の取得状況:
- ISO27001(ISMS:情報セキュリティマネジメントシステム)やSOC報告書(Service Organization Control reports)など、情報セキュリティに関する第三者認証を取得しているか。これらは、客観的なセキュリティレベルの指標となります。
- FastAccounting は、お客様に安心してサービスをご利用いただくため、厳格なセキュリティ基準に基づいた情報管理体制を構築し、第三者機関による認証も取得しています。
- 脆弱性対策:
- 定期的な脆弱性診断やセキュリティパッチの適用が行われているか。
サポート体制とセキュリティ対策は、サービスの安定運用と企業の信頼性確保に直結する重要な要素です。サービス提供会社に対してこれらの項目を具体的に質問し、納得のいく回答が得られるかを確認しましょう。契約書やSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)の内容も細かくチェックすることが大切です。
まとめ:賢明な選択が経理DXの第一歩
請求書受領サービスの選定は、単にツールを選ぶという行為に留まらず、企業の経理業務の未来を左右する重要な意思決定です。本記事で解説した「失敗しないための5つの重要ポイント」――①自社の課題と目的の徹底的な明確化、②AI-OCRの真の精度と対応範囲の見極め、③会計システム等とのシームレスな連携の確認、④料金体系の透明性とトータルコストの把握、そして⑤サポート体制とセキュリティ対策の徹底確認――は、その羅針盤となるでしょう。
よくある失敗例を反面教師とし、これらのポイントを一つひとつ丁寧に検討・検証することで、自社のニーズに真に合致した最適なサービスを選び抜くことができます。そして、その賢明な選択こそが、請求書処理業務の劇的な効率化、コスト削減、ペーパーレス化を実現し、ひいては経理部門がより戦略的な役割を担う「経理DX」への確かな第一歩となるのです。
市場には多くの優れた請求書受領サービスが存在しますが、それぞれの強みや特徴は異なります。FastAccountingは、独自の高精度AI技術と、お客様の課題に深く寄り添うコンサルティング力で、請求書処理業務の変革を強力にサポートいたします。もし、サービス選定でお悩みでしたり、自社の経理業務のDXにご関心をお持ちでしたら、ぜひ一度FastAccountingにご相談ください。お客様にとって最善のソリューションをご提案させていただきます。