導入事例 KDDI株式会社

KDDI株式会社は「Tomorrow, Together」をブランドメッセージに掲げ、通信とライフデザインの融合を実現すべく、多彩な事業を展開している。「au」ブランドを中心としたモバイル通信や固定通信、スマホ決済などの金融、英会話のイーオンやキッザニアといった教育・エンターテインメント事業など、提供するサービスは多種多様。5G/IoT時代における新たな価値創造を実現するため、持続的な成長を目指している。

そのKDDI が、VUCAの時代に対応すべく経営管理のデジタル化を進めている。 2019年、財務会計や購買領域のERP導入に続いて、2021年にはAIソリューション「Remota」の導入を決めた。A Iソリューションを活用して目指す経営管理の姿とは?コーポレート統括本部 経営管理本部 DX推進部長の和久 貴志氏にお話を伺った。

課題

VUCAの時代に求められる迅速な意思決定のために必要なこと

VUCA とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取り、予測不能の現代を象徴するキーワード。

「最近はVUCAの時代と言われるようになり、想定外の環境変化に柔軟に対応していく必要があります。そのためには、リアルタイムに経営状況を把握して、次の一手を迅速に意思決定していくことが重要で、会計オペレーションの高速化や有用なデータの収集・分析がカギとなってきます。」(和久氏)

経営管理本部は、KDDIグループの管理会計・財務会計・IR業務を担っており、そのうち和久氏の所属するDX推進部は約60名。主に会計に関する業務改革の設計やデジタル化を推進するグループと、シェアードサービスとしてKDDI子会社22社の財務会計オペレーションに従事するグループで構成されている。

もともとKDDI本体の経理システムはオンプレミスだった。先の見えない競争環境のもと、加速度的な事業環境の変化に経営判断が追いつかず、IFRS(国際財務報告基準)導入した新たな会計基準や基準改定への対応ができないというさまざまな課題が発生。このまま業務に機能を合わせるコンセプトのシステムでは、この先10年後に戦っていくことができない、という危機感を感じたと言う。

2015年に社内で業務システムの標準化・効率化を目指して「プロジェクト:To-Be」を発足させ、To-Be=あるべき姿を模索しようと、「時代の変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築」を目標に定め、

業務をERPパッケージに合わせる方針へと舵を切った。

従前のオンプレミスのシステム構築にも携わっていた和久氏は、自分が手掛けた経理システムを自ら否定しなければならないこのミッションは、非常に大変だったと話す。そして、4年の歳月を経て2019年からERPパッケージで運用を開始。

こうした取り組みにより捻出された人員でDX推進部が設立され、業務改革をさらに推進していく体制が整った。

会計伝票業務
フローの課題
  • 現場担当部門の業務軽減

    会計伝票の起票は各部入力方式――証憑をみながら各部門の担当者が入力、起票している。現場担当者の業務軽減を図りたい。

  • 入力漏れ・ミス

    会計伝票を人手で一から入力する方法では、金額や摘要欄、仕訳内容といった入力誤りが発生しやすい。差し戻しが発生することで、担当者、承認者、経理部門それぞれに工数がかかる。

  • 伝票二重登録のリスク

    原本の請求書だけではなく電子データでの請求書が普及したため、会計伝票の二重登録のリスクが発生。

会計伝票業務フローの主な課題は、「現場担当部門の業務の軽減」「入力漏れ・ミスの軽減」「伝票二重登録リスクの回避」の3つだ。特に、経理部門だけでなく現場担当部門の業務も軽減していくためには、単にデジタルツールの導入だけでなく、抜本的な業務フローの最適化や改革が必要となる。

選定理由

会計伝票業務フローの抜本的な改革を目指してパートナー選定

会計伝票業務のフローの抜本的な改革のために、まず目先の目標は「オペレーションを標準化してデジタル化をすること」だ。オペレーションの標準化とデジタル化の先に、抜本的な業務フローの改革が待っている。そのためには、VUCAのこの時代に変化に柔軟に対応しながら、最終ゴールまで一緒に伴走したいパートナーを選定する必要があると考えていた。

選定理由
  • CX、EXに対しての考え方

    証憑の読取精度の高いツール導入だけでなく、お客さまの抜本的な改革要件を実現するため、全体フローを俯瞰しながら支援いただけること

  • 会計業務に特化したソリューション

    制度など激変するなかで、会計業務に熟知いただいているパートナーと相談しながら、課題に対して一緒に検討していけること。

「ツールの選定だけであれば、ツール自体の良し悪しだけで判断して終わりなのですが、我々には抜本的に改革したいことが明確にありました。この、やっていきたい要件に対して親身に寄り添っていただきながら、一緒にどう実現いただけるかを考えていただける、これが非常に重要だと思っています。」(和久氏)

数年先にはインボイス制度や請求書・領収書のデジタル化への対応も見据えている。制度の変更なども影響し、デジタル化した業務自体をもう一度見直すことも出てくることも考えられる。そのような状況でもユーザー目線で考えられる会社だと柔軟にご支援いただけと感じたことが選定理由として大きいと話す。

KDDI株式会社 経営管理本部 DX推進部 部長 和久 貴志氏

今後の展望

抜本的な業務フローの改革までの5ステップ

和久氏は、「Remota」をAIでスキャニングして読取精度が上がっていくだけではなく、会計仕訳を生成することができることを高く評価している。その上で、5ステップにフェーズを分けて、「Remota」の導入領域を拡大していく予定だ。

  • S T E P1:会計伝票入力の補助
    「Remota」を使って証憑画像データのスキャニングを行い、文字データとして読み取り、会計システムへの入力補助まで行う。人の転記によって起きていた入力漏れやミスを防ぐ。また、伝票二重登録もAIによって自動的に検知されるため、リスクを回避できる
  • S T E P2:会計仕訳入力の補助
    請求書や領収書の内容をAIで読み取ってAIが分析し、会計の仕訳情報の入力補助を行う
  • S T E P3~4:導入の拡大
    STEP1~2をスモールスタートとして「Remota」を安定稼働させ、全国展開へと拡大する
  • S T E P5:抜本的な業務フロー改革
    証憑画像データのスキャニング作業を集中化、その情報と事前に承認された計画や稟議決裁情報をマッチングさせることで伝票が自動生成され、現場各部担当は確認するだけの世界へ

経理部門が従事する業務も変わってくるでしょう。「オペレーションの定型化によりデジタル化させることで、人は戦略的会計処理や分析を強化して、次の一手を早く提案できるような高付加価値業務に従事することになると考えています。」(和久氏)

記事の内容は、2021年4月14日時点での情報です。