複雑性を極める連結会計:AIエージェントが大企業のグローバル決算を自動化する

  1. 連結会計の課題:複雑な処理と増大するプレッシャー
    グローバルに事業を展開する大企業にとって、連結会計は避けて通れない重要な業務です。しかし、そのプロセスは極めて複雑であり、多くの課題を抱えています。複数の子会社や関連会社、異なる会計基準、多通貨取引、そして膨大な量の内部取引データなど、処理すべき情報は多岐にわたります 。これらの情報を正確かつ迅速に収集・集計し、連結財務諸表を作成するには、高度な専門知識と多大な労力が必要です。  

月次・四半期・年次決算の早期化へのプレッシャーが高まる中、連結会計プロセスの非効率性は、経営判断の遅延やコンプライアンスリスクの増大に繋がりかねません。特に、手作業によるデータ収集や照合、Excelベースでの複雑な計算や調整は、人的ミスの温床となりやすく、決算品質の低下を招く恐れがあります。

  1. AIエージェントが連結会計タスクに取り組む方法
    AIエージェントは、この複雑な連結会計業務を自動化し、効率化するための強力なソリューションとして期待されています。

2.1. 子会社からのデータ収集の自動化
AIエージェントは、各子会社が使用している会計システムやERPシステムと連携し、連結に必要な財務データを自動的に収集します 。収集されたデータは、統一されたフォーマットに変換され、連結会計システムにスムーズに取り込まれます。これにより、従来、メールやExcelファイルで行われていた手作業によるデータ収集の手間と時間を大幅に削減できます。  

2.2. AIによる内部取引の照合と消去
連結会計における最も煩雑な作業の一つが、親子会社間および子会社間の内部取引の照合と消去です。AIエージェントは、収集された取引データを分析し、内部取引を自動的に識別します。さらに、取引先、金額、日付などを照合し、不一致や差異を検出します 。  

マネーフォワード クラウド連結会計の「内部取引の照合・相殺消去」機能では、OpenAI社のAIサービスを活用し、相手会社のサジェスト機能によって煩雑な名寄せ作業を効率化しています 。また、Nominal社が提唱する「シャドーレジャー」コンセプトでは、既存ERPを拡張する形で独自の仕訳帳を生成し、連結決算を含む複雑な処理をカスタム自動化するとしています 。  

2.3. 連結仕訳とレポートの自動生成
内部取引の照合・消去が完了した後、AIエージェントは必要な連結仕訳(投資と資本の相殺消去、債権債務の相殺消去、未実現損益の消去など)を自動的に生成し、計上します 。Oracle Fusion AIでは、該当する条件が満たされたときに自動的にトリガーされるインテリジェントな自動化により、連結と決算プロセスを迅速化するとしています 。  

さらに、連結貸借対照表、連結損益計算書、連結キャッシュフロー計算書といった連結財務諸表や、経営管理用の各種連結レポートもAIエージェントが自動で作成します。これにより、レポート作成にかかる時間を大幅に短縮し、経理担当者は分析業務や経営層への報告準備に注力できます。

2.4. 資本連結・成果連結のサポート
AIエージェントは、資本連結(親会社の子会社に対する投資勘定と、子会社の資本勘定の相殺消去など)や成果連結(グループ会社間の内部取引から生じる未実現利益の消去など)といった、より高度な連結処理もサポートします。ルールベースの処理と機械学習を組み合わせることで、複雑な連結ロジックに対応し、正確な連結財務諸表の作成を支援します。

  1. 導入メリット:迅速性、正確性、透明性の向上
    AIエージェントを連結会計に導入することで、大企業は以下のようなメリットを享受できます。

決算早期化: データ収集からレポート作成までのプロセス全体が自動化・高速化されるため、連結決算にかかる時間を大幅に短縮できます。
精度の向上: 手作業によるミスを排除し、一貫したルールに基づいて処理を行うため、連結データの正確性が向上します。
業務負荷の軽減: 煩雑で時間のかかる作業から経理担当者を解放し、より戦略的な業務への注力を可能にします。
透明性の向上: 連結プロセスの各ステップがシステム上で記録・管理されるため、トレーサビリティが向上し、監査対応もスムーズになります。
コスト削減: 残業時間の削減や、連結業務に関わる人員コストの最適化に繋がります。

  1. AI搭載連結会計ソリューションの事例
    近年、AI技術を組み込んだ連結会計ソリューションが登場しています。マネーフォワード クラウド連結会計は、AIサポート付きの「内部取引の照合・相殺消去」機能を提供し、グループ会社間取引の照合、消去仕訳の作成を自動化することで、連結決算担当者の負荷を軽減しています 。また、Oracle Fusion ApplicationsのAI機能も、インテリジェントな自動化により連結・決算プロセスを迅速化し、スタッフを付加価値業務へシフトさせることを目指しています 。サイバーエージェントの子会社AI Shiftも、企業向けにAIエージェントの活用戦略策定から実装・運用までを支援するサービスを提供しています 。  

ファーストアカウンティングが開発した経理特化型AI「Deep Dean」は、その高度な会計知識とルール理解能力により、複雑な連結会計のロジックを学習し、自動処理の精度向上に貢献する可能性があります。特に、日本企業特有の会計慣行や複雑なグループ構造に対応した連結処理の自動化において、Deep Deanのポテンシャルは大きいと言えるでしょう。

大企業の経理部門にとって、AIエージェントによる連結会計の自動化は、もはや避けては通れない道です。複雑なグローバル決算業務の効率化と高度化を実現し、経営判断のスピードと質を向上させるために、AIエージェントの導入を積極的に検討すべき時期に来ています。

グローバル連結会計の課題解決にご関心のある企業様は、ファーストアカウンティングにご相談ください。